<八高つれづれ草子> 第30回 

上X国語翁

【 ワシワシに 負けそうになる 夏課外 】

クマゼミと「課外」のお話。

八高が朝の課外授業を廃止してからもう8年ですが、夏休み課外は現在も7月末まで、

3年生はお盆前までやってます。

そもそも「課外授業」は福岡県の進学校において昭和40年前後から放課後や夏・冬休みの期間中に3年生を中心に希望制などのゆるやかな形で行われていたようですが、僕が教師になった昭和50年代から、朝課外などとともに1年2年生も含め全員必修の課外授業として各校で実施されるようになりました。

夏休み課外、強烈だったのはエアコン登場以前のころ。年齢で言えば40歳から60歳近くの同窓生の方々は「タイヘンだったよ」と共感いただけますか。

(八高にエアコンが設置されたのは平成15年。学校にエアコンはない、教師はそれを誰も疑いませんでしたが、当時のPTAの皆さんの尽力で、どこよりも早く八高の教室にはエアコンが登場しました。とんでもなく嬉しい驚きでした。)

この夏も猛暑酷暑。さて思い出しています。エアコンのない熱の充満した教室での全員必修の夏休み課外。これは耐暑訓練か、古典文法殺人事件か。うだる暑さにページが汗でくっつく。教室が蜃気楼に霞む。そして、開け放った窓外の緑から、ワシワシが大音量で授業妨害。このワシワシに負けずに声を張るのが教師の仕事でした。

僕の夏課外の記憶には、いつも必ずワシワシ(=クマゼミ)が鳴いています。

さて話を飛ばして、セミの話をやります。

芭蕉が『奥の細道』の旅で、山形の立石寺(山寺)に参詣して詠んだ名句

閑さ(しずかさ)や 岩にしみ入る 蝉の声

ここでクイズです。この句に詠まれた「蝉」は何ゼミだったでしょう?

①クマゼミ ②アブラゼミ ③ニイニイゼミ ④ミンミンゼミ

実はちょうど100年前、日本文学界では、これに大真面目な論争がありました。斎藤茂吉の答えは②、ところがこれに異論続出、論争の最終決着は③のニイニイゼミでした。

根拠は「場所と時期」。芭蕉がこの句を山形で詠んだのは元禄2年5月27日、これを現在の暦になおすと、7月13日ということで、この時期にはこの地方にはアブラゼミやミンミンゼミはまだ鳴いてないというわけです。ツクツクボウシなどももっと遅いでしょう。さてでは①クマゼミは?

夏休み課外で教師と張り合うワシワシの鳴き声は「しずかさやー」の対極だから真っ先に✕、と言いたいとこですが、そもそもクマゼミは東日本にはいなかったセミです。学生のころ九州に遊びに来た横浜の友人がクマゼミに驚いて「初めてだ」と教えてくれるまで、僕は知りませんでした。温暖化の影響か、現在では北関東まで北限が昇っているとのことですが、東北山形にはいないセミがわれらのワシワシでした。

小学生のころ、夏休み、虫かご、蝉取り、と言えば王様はクマゼミ。捕まえた瞬間、手の中で爆発的に鳴き、力強く抵抗する感触がよみがえります。

※写真のクマゼミは、我が家の窓に激突して脳震盪でしばらく動けなかったクマ君です。課外授業を妨害したやつではありません。

※立石寺と句碑の写真はネットからの借用です。

熊本地震、被災された皆様、心よりお見舞い申し上げます。

高校27期 上掛靖良