<八高つれづれ草子> 第35回
上X国語翁
【 海が見える 】

「海が見える」で浮かぶのは、特別棟4Fの音楽教室、美術教室。晴れた日には金毘羅山、戸畑越しに若戸大橋が見えたりする遠景。これが良かった。
僕は枝光生まれ。同じ八幡でも、洞海湾に面した坂の街に育ったものにすると、暮らしの風景には海が見えていた。



先日、尾道を歩きました。尾道もまた坂と海の街です。商店街の入り口に林芙美子の文学碑。「海が見える」は尾道で女学校時代を過ごした彼女の言葉です。
海が見えた 海が見える
五年ぶりに見る 尾道の海は
なつかしい

林芙美子は、門司に生まれ(下関とも)、小さいころ若松や直方でも生活した。尾道の芙美子像は『放浪記』のイメージなのか、旅カバンに傘がいい感じです。
長い商店街を行くと、パン屋さんの粋な看板、「パン屋航路」とある。一人で怪しく笑う。このシャレおわかりですか。これ文学史クイズ。ヒントは尾道にしばらく住んだ文豪N.Sの作品名。


千光寺へはロープウェイはやめてヒーヒーゼーゼーで急坂を上ります。
中腹に、志賀直哉の旧宅。正解は『暗夜行路』です。
千光寺から「海が見える」。尾道大橋、光る海、向こうはしまなみ海道です。

夕刻、駅前で島行きの渡船場を眺めてると、到着した船からどっとばかり、すごい数の高校生達が降りてくる。次の船でも同じことが。がぜん興味が湧いて「ひょっとして島に高校があるんですか」と地元の方に尋ねると、「尾道高校が向島にあります」でビックリ。島から本土に通うのは聞くこともあるが、本土から島の学校に大挙して通うとは。

調べてみると、尾道高校は創立70周年を迎える私立の伝統校。20年ほど前に本土側から、向島に移転。生徒は尾道大橋を利用する他、本土側から300人くらい?が渡船で通学という(この数字はAI推計)。渡船は5分で向島に到着。それでも毎日、大勢が本土から島に向かって海を渡る通学は格別な感じ。
八高生にも海を渡る生徒がいる。若戸渡船。じわじわと親近感が増す、尾道高校。坂と海の街、校舎移転の伝統高校。ついでに校訓は「至誠一貫」で、初代校長のお言葉。おおー「誠ひとつの一筋の道」と同じだ。

さてもう一度、林芙美子。彼女の有名な言葉、実は続きが、こんなふうです。
花のいのちはみじかくて
苦しきことのみ多かれど
風も吹くなり 雲も光るなり
人生、生きてれば、気持ち良い風の吹くこともあり、雲間に光のさすこともあり、ということですね。
高校27期 上掛靖良

