<八高つれづれ草子> 第33回

上X国語翁

【 55年前の贈り物 】

生徒昇降口の下駄箱で、靴をスリッパに履き替え、校舎に入る。1年生は左右に分かれるが、2・3年は中央階段を、フーコー振り子の周りを回るように上がっていく。八高清田校舎の一日の始まりです。

僕らには何でもない日常ですが、この <フーコー振り子のある風景> はかなり特別なもののようです。AIに聞いてみると、日本にフーコー振り子が常設されているのは全国に50か所程度、福岡で言えば八高と九大の伊都キャンパスの二箇所ではないかとのこと。

考案者のレオン・フーコーは、フランスの物理学者。日本では江戸末期ですが、1851年、パリのパンテオンで、長いワイヤーにつるした振り子を揺らし、地球の自転によって振り子の揺れる方向が少しずつ変化するという公開実験を行ったのが「フーコー振り子」ということです。

北九州でこれを揺らすと1時間に11度ほど回転し、学校の1時間目から放課後まで揺らせば、揺れの方向が朝と100度くらい大きく変わるそうです。なるほど地球というか地面殿は回っているのか。

八高のフーコー振り子が台座から外されて、ゆらゆら揺れている情景はなかなか見ないでしょう。僕は40年で5回くらいかな、いつぞや理数科生たちが取り囲んでレポートしてるときに、解説してもらった覚えがあります。

フーコー振り子前のミニコンサートの記憶も鮮明です。文化祭や何かの折に音楽部の生徒たちが、あそこで歌を歌い、チェロ、バイオリンなど演奏します。何とも気持ち良い音が3階まで吹き抜けるんです。いい場所なんです。

八高のフーコー振り子は、清田校舎が建てられた折に贈られたものです。吹き抜けの壁面の白いプレートに「旧師 中村堅一先生寄贈」とあります。

中村先生は昭和28年から17年にわたって物理の教諭として八高に勤務されました。昭和45年、翌年には清田校舎へ移転という6月に、41歳の若さで急逝されたことが八高タイムズに残されています。八高フーコー振り子は先生の志によるものです。

調子よく誰かと話しながら、あの中央階段を上がって行ったこともあり、そうでないときもあり。何を考えていたのだか、3階からフーコーを見下ろし、ボーっとしてたこともあり。フーコー振り子は八高で一番印象に深いオブジェになりました。

清田校舎ができて、中央階段にフーコー振り子が揺れはじめて55年。遅ればせながら、中村堅一先生の贈り物に「ありがとうございます」しみじみの感謝です。

高校27期 上掛靖良

※レオン・フーコーの写真と振り子実験のイラストはWikipediaから転載しました。